計量・混合・吐出、それぞれの工程で精度が崩れるポイント

「材料も装置も変えていないのに、なぜか歩留まりが落ちた」

2液性の樹脂を扱う現場で、こういう相談をよく受けます。

生産技術の西尾です。
電子部品メーカーで15年、パワーモジュールや車載ECUの塗布工程を担当していました。
今は独立して、中小メーカーの工程改善をお手伝いしています。

2液の塗布は、計量・混合・吐出という3つの工程が直列に並んだ構造をしています。
どこか1つが崩れると、結果は最後の塗布面に出る。
ところが症状だけを見ても、どの工程が犯人なのかは分かりません。

今回は、工程ごとに精度が落ちる典型的な要因を整理します。

計量工程は、温度と気泡で静かに崩れる

まず疑ってほしいのが液温です。

樹脂の粘度は温度で大きく変わります。
タンクからポンプ、ホース、ミキサへと流れる間に液温が下がれば粘度は上がり、ポンプへの吸い込みが追いつかなくなります。
朝一番のショットだけ塗布量が少ない、という現象の多くはこれです。

次に気泡。
原材料の入荷時点ですでに巻き込まれていることがありますし、溶存していたガスが後から析出してくることもあります。
気泡が計量室に入れば実容積が狂い、ひどいときは吐出そのものが抜けます。

放熱用のギャップフィラーのようにフィラーを多く含む材料では、もう1つ気をつける点があります。
ポンプの摺動部が摩耗するのです。
硬い無機粉が入った材料を長期間流し続けると、少しずつ精度が落ちていきます。
超硬合金製のピストンを採用した機種があるのは、この摩耗を前提にしているからです。

計量工程で見ておきたいのは、次の3点です。

  • タンクからノズルまでの各部位で液温が保たれているか
  • 材料に脱泡処理をかけているか、または脱泡された状態で受け入れているか
  • フィラー含有材料に対して、摺動部の材質が合っているか

混合工程は、目で見えないから厄介

混合の難しさは、うまくいっているかどうかが外から判断しづらい点にあります。

主剤と硬化剤の色が近い材料だと、混ざり具合を目視で確かめられません。
比重差や粘度差が大きい組み合わせでは、ミキサの中で分離していることすらあります。
そのまま塗れば当然、硬化不良が出ます。

もう1つ避けて通れないのが可使時間(ポットライフ)です。
2液を混ぜた瞬間から反応は始まっていて、温度が高いほど早く進みます。
ポットライフの試験方法はJIS K 6870として規格化されているので、材料メーカーの提示値がどういう条件で測られたものかは確認しておくと安心です(日本規格協会の規格詳細ページから内容を確認できます)。

反応の早い材料でダイナミックミキサを使うと、内部で硬化が進んでしまいます。
だから使い捨てのスタティックミキサが選ばれる。
洗浄液を使えない環境でも同じです。
ただしスタティックミキサはエレメント数を増やすほど混合度が上がる代わりに圧力損失も増えるので、闇雲に増やせばいいわけではありません。

粘度差や混合比率の差が大きい材料なら、回転数で混合の強さを調整できるダイナミックミキサのほうが向いています。
このあたりは材料ごとの実測で決めるしかない領域です。

吐出工程は、多すぎても少なすぎても不良になる

最後の吐出は、症状が目に見える分だけ原因を追いやすい工程です。

液だれの原因は、材料の表面張力が弱いか、ノズルのパイプが太すぎるかのどちらかであることが多いです。
ノズル先端の内径を絞る、温度管理で粘度を保つ、スクリューポンプならサックバックを効かせる、といった対策が定石になります。

放熱材の場合、塗布量の適正範囲がかなりシビアです。
少なければ熱の逃げ道が確保できず、多ければはみ出して不要な箇所に付着します。
高温では液体、冷えると固まるタイプの材料もあり、その場合はタンクからバルブまでの全経路にヒーターが要ります。

装置選定で迷ったら、自社の材料で実機テストをするのが結局いちばん早いです。
ディスペンサメーカーの多くはテストルームを用意していて、持ち込んだ材料で吐出を確認できます。

実際の動きを先に見ておきたいという方は、放熱用2液ギャップフィラーの混合吐出デモを紹介したページが参考になります。
高フィラー含有かつ高比重の樹脂を、協働ロボットと組み合わせて計量から吐出まで行うデモ映像です。
協働ロボットの活用は製造現場全体で広がっていて、動向は日本ロボット工業会の統計資料でも確認できます。

まとめ

2液の塗布不良を追うときは、症状から工程を絞り込む順番が大事です。

  • 塗布量が安定しない、抜けが出る → 計量工程(液温・気泡・摩耗)
  • 硬化不良が出る、部分的に軟らかい → 混合工程(比率・分離・ポットライフ)
  • 液だれ、はみ出し、量の過不足 → 吐出工程(ノズル・温度・経路のヒーター)

3工程が直列である以上、どこか1つだけを詰めても安定はしません。
現場で計器を眺めながら、上流から順に潰していくのが遠回りに見えて確実です。

樹脂の硬化や接着のメカニズムそのものを深く知りたい方には、日本接着学会の資料や学会誌が役に立ちます。